005年の映画「クラッシュ」。監督はポール・ハギス。
クリスマスを間近に控えたロサンゼルス。
1つの交通事故を起点に、多民族国家であるアメリカで暮らす様々な人々を
取り巻く偏見・レイシズムを下敷きに、オムニバス的ではあるのだが、
そのひとつひとつが微妙に絡み合っている、つまり「クラッシュ」しているという
なかなか手の込んだ映画である。
その作り方によるものか、あるいは、テーマ性の事情のせいか、
本命と称されていた『ブロークバック・マウンテン』を押さえ、
第78回アカデミー賞作品賞を受賞した。
ロサンゼルスからはほど遠い日本ではあるが、「クラッシュ」のような
繋がりがあるのだろうか。おそらく、仏教圏の本国では、それを「クラッシュ」とは
言わずに「お導き」というのじゃないか。あるいは「因果応報」とか言っている。
今朝、一ダース買ってある、炭酸飲料を仕事場に持っていくとき、
キャップを軽くしめていたおかげで、カバンにこぼしてしまった。
まいったな、細野商店の帆布である。汚したくない。が、甘ったるい液体がその布にしみこんでゆくので、しかたなく、わたしは、新品のタオルで拭き拭き車に乗った。
車にタオルなんてめったに持っていったことなんてない。そういう意味では、非日常的なことなのだ。
きょう、学校は昼で終わりだったから、昼休みに学校を後にした。
そのときだ、体育館に駆け込んでゆく女生徒。
「ジージ、帰っちゃだめ。バレーボールやるよ」
ご存じかどうかは知らぬが、わたしは、学校では「ジージ」と言われている。
つまり、すでに「終わった人間」ということである。
「はやく、はやく」
琴音と舞子がわたしを呼ぶので、わたしもバレーボールは嫌いじゃないから、
靴下になり、ワイシャツのままわたしたちは6人でトス・パスをした。
新築の体育館は、床がピカピカで気持ちよかった。
おかげで、わたしは汗だくである。
体育館を後にしたとき、もうワイシャツはすこし重くなっている気がした。
車にもどって汗の引くのを待った。
ん。あ。タオルがある。
おう、これは好都合じゃないか。
わたしは、頭から首筋、顔と後部座席に置いてあったタオルで
しっかりとぬぐう。
そーか、きょう、炭酸をこぼしてタオルを車に入れたのは、
このためだったのか。
すべては、お導き、クラッシュして世の中はうごいているのであった。