かなり昔のはなしである。
あたらしい校長を迎えて、
入学式が挙行された。
わたしは、この小学校の同窓会の会長なので、
いつも、式典には来賓でよばれる。
「せんせいから、ふたつ、お願いします」
こんどの校長先生は「ふたつ」であった。
前任の校長は三つだったけれども、
このふたつのお願いは、あいさつをすること。
もうひとつは、探究心をもつこと。
だったようにおもう。
じっさい、わたしのような老成の身にも、このふたつが
覚え切らないのだから、まだ6歳になったばかりの
お子たちに、このふたつがこころに響いたであろうか。
まず、わかってないだろう。
よくいるよね。結婚式でも、
「わたしから三つの袋をあげましょう」
とか。
なんとお仕着せなことを言うのかしらんとわたしは
いつもおもうのだが、つまり、
そんなのあんたからもらわくってよいわい、って
おもうのだ。
なんだっけな、堪忍袋、玉袋・・・うん、わすれた。
どうも、スピーチとなると、三つとか、ふたつとか、
そういう数字がでてきて、その三つ、あるいは、ふたつが、
覚え切らない。
やはり、あいてのこころに達するのは、「ひとつ」である。
「わたしからもうしあげることは、ひとつです。
お父さん、お母さんを大切に使用」
ね。インパクトあるでしょ。
ま、つまり、ワンワードポリティクスなのだ。
これに限る。
これで成功したのが、小泉純一郎である。
かれは、「うん、やる」
しょっちゅう、この一言だった。
「うん、やる」
しかし、そう言いながらほとんどやらなかったけれども。