墓穴を掘った話。
それは、ふたりの娘がまだ高校生と中学生のころの話である。
うえの娘が夕食をとりながら、
ふと、次女に
「ね、ロードって知ってる?」
と、訊いたのだ。
となりで聞いていたわたしは、これは父親のカンってやつ、
次女が答えるより前に、
「おまえ、カラオケ行ったろ?」
と、訊いた。
と、長女は食べていたものを、ぷっと吹き出したのだ。
「ん。それも、年上と行ったろ?」
ユイはまた「ぷっ」と吹き出した。
「そしてよ、全部おごってもらったろ?」
「え、なんでわかった?」
親だもの、ぜんぶわかるさ、と答えておいたのだけれども。
たった一言の「ロードって知ってる?」。
でも、それは簡単な理路である。
あんな若い子がロードなんて歌、知るはずない。
ロードって歌は、男がカッコつけて歌うカラオケの定番である。
それも、ずいぶん年上の男。
それなら、高校生の娘に金を出されせるはずはない。
そのくらい親なら、だれでも読むさな。
そして、娘は最後にこう付け加えた。
「わたし墓穴ほった?」