にんげんには「身の丈」というものがある。
それはこんな話だ。
結婚式に呼ばれたA子さん。
なにひとつおめかしなんかしないA子なので、
指輪もネックレスもろくなものがない。
そんな話をおとなりのセレブB子さんに話したところ、
気安く、胡桃ぐらいのオパールの指輪を貸してくれた。
A子は、欣喜雀躍、よろこんで式に出かけ、
夜おそくに帰宅する。さて、指輪を返そうとしたところ、
台座から、あの深部からかがやく七色の石がないではないか。
どこかに落としたのだ。
A子の動揺は並大抵ではない。
もういちど、式場までもどり、すでに閉館している会場を
開けてもらい、隅から隅までさがした。
ない。
駅では、拾得物係りに問い合わた。
しかし、ない。
A子は、自宅と会場と二回も往復したが、
けっきょく見つからなかったのだ。
B子に、なくしました、とは言えない。さあ、どうする。
旦那さんにも言えない。
しかたがなかった。
A子は、ひとり宝石売り場にゆき、
この台座にあうオパールをローンで買ったのである。
そしてA子はお隣のセレブに頭をさげに行った。
「ごめんなさい。じつは、この石落としちゃって」
と、A子が勇気をだして誤ったところ、言下にB子が答えた。
「あら、いいのよ、あれガラスだから」