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寝られた

子どものころ、庭のさるすべりの木を使って、
秘密基地のようなものを作った。

 子どもは、そういうものを好む。
ディズニーランドに、トムソーヤの家だったか、
ああいう大木をそのまま家に改造することに、
ものすごく憧れたものである。

 ちなみに、いま、エアコンのない一階の我が家は、
窓という窓、南と北と西、を全開にして生活している。
網戸はあるけれども、風や、もちろん埃もすべて
さえぎるものなく部屋を通り抜けてゆく。

 窓の外は、若々しい木々の緑が、風にゆれているのが見える。
我が家と庭は、決して隔絶したものではなく、
なだらかに繋がっているのである。

 それは、むかし憧れた、大木の中の家と、
どこか通じるものがあるのではないだろうか。

今朝、地響きのような雷がなった。

徐々にその音が大きくなってゆく。
それとともに、スコールのような雨音。
庭にある葉という葉に、ひとしく叩きつけてゆく。
乱暴だけれども、それが自然というものだろう。

わたしの枕元数十センチのところが網戸なので、
外の音は、そのままわたしの耳元に届く。

 各地で、この大雨による被害もあったろうけれども、
わたしは、なんだか自然のなかに包まれているようで、
それは、ささやかな快感だったのだ。

 雷でたしかに目を覚ましたけれども、
なにかに包まれる感覚のまま、
それからあとは、よく寝られたのである。