短歌の合宿にきた。
ずいぶん長い道のりだったとおもうが、
はたして電車で行ったのか、
車か覚えていない。
どこのホテルなのか、
すこし学校のようなにおいもする。
そんなホテルである。
代表の、わたしの師匠がいないものだから、
わたしが開会のあいさつをする。
メンバーは十数名というところ。
さて、歌会の資料をかばんから出そうと、
どうしたことか、詠草一覧表が、今年のではない。
ずいぶん昔の資料じゃないか。
つまり、わたしは、詠草一覧を忘れてきたのだ。
あせる。
と、となりに座っていたタンジ君という
わたしの元の職場の同僚が、
怪訝そうな顔つきで、
わたしに、じぶんのかばんを
放り投げてきた。
これでコピーしてこいよ、という意味なのだろう。
わたしは、すぐさま会場を後にし、
コピーを探してホテルを歩いた。
タンジ君のかばんを抱きかかえながら。
と、どういうわけかトイレに行き、
コピーはいらないんじゃないかと、
会場にもどってきた。
すると、トイレにかばんを忘れたことに気づく。
なんで忘れるのだろう、もし、なかったら、
わたしはタンジ君のだいじなものまで
失うことになる。
また、わたしはあせった。
いそいで、学校の廊下のようなところを
小走りにもどる。
と、ちゃんと置いた場所にかばんはあったので、
ほっとしながら、会場にもどる。
が、またトイレに行きたくなる。
こんどは、床になぜかかばんを置き、行く。
で、会場にもどるのだが、
また、床においたかばんを忘れた。
取りにもどると、
床には、タンジ君のかばんともうひとつ、
女性のもつハンドバッグもある。
このバッグはだれのかといえば、
島倉千代子みたいなひとのだった。
彼女は、畳で昼寝をしていた。
会場にもどるとき、わたしはホテルの庭を通った。
そこは、たくさんの花が植えられて、
花々のなかに、続いてゆく細い道があった。
そのとき、見知らぬ女性がわたしに
擦り寄ってきて、この花はね、とか説明をし始めた。
知らない女性なのだが、
わたしの好きなひとがきらっているひとらしい、
という認識はあるものの、このひとが
だれか知らないが、やけに慣れなれしい。
ところでわたしの好きなひとはだれなのか、
そして、その好きなひとが嫌っているこのひとは、
だれなのか、さっぱりわからない。
わたしのすきなひとが嫌っている、
このひとは、白いブラウスを着ていた。
わたしは、そのひとから別れて会場に
戻ると、歌会はすでに終わっていて、
宴会になっていた。
つまり、わたしは歌会にはまったく参加せずに、
かばんを何度もわすれ、
見知らぬ女性になれなれしく声をかけられ、
そして、いま缶ビールを飲もうしているのだ。
歌会のメンバーは、タンジ君以外は、
ひとりも知らないひとなのか、それとも知友なのか、
それもわからなかった。
夢はここでおわる。
達成感のない、いささか疲労が困憊する夢であった。
しかし、しばらくぶりに出てきた
見知らぬ女性。
これは、男性内にある少数女性遺伝原質、
いわゆる「アニマ」である。「アニマ」とは
「アニメーション」の原型の語である。
この「アニマ」、つまり少数女性遺伝原質は、
男性内にある無意識の具現化で、
無意識は見知らぬ女性となって
夢に現れるのである。
フロイトの言説である。
この「アニマ」がわたしに何を言ったのか、
そこだけは、おもいだせないのである。