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二代目

 わが街には、一軒、うなぎ屋さんがある。
二代目が経営しており、三代目も小学校の
卒業式の日の「わたしの夢」でうなぎ屋を継ぐと
言っていたから、安泰なのだろうが、
ざんねんながら、街の評判は「初代はよかったけれどね」と
言うものが多い。

 わたしは、初代も二代目も知っているが、
そんなに味はかわらないとおもうのだが、
二代目というと、一代目より「なにか」
ドミナントに向上するものがないと、
どうしても比較されて点数が落ちてしまう、
というのが世の常なのではないだろうか。

 そもそも、うなぎの値段も高騰しているようだし、
気の毒な気もする。


 ユニクロも、二代目のときに、
野菜を売り出して、大損害をこうむって、
また、初代会長が陣頭指揮をとっている。

 どうも二代目というものには、
重い荷を背負わされる運命にあるというものだ。


このあいだひさしぶりに映画を観た。

 スタジオポノックによる
「メアリと魔女の花」。米林宏昌脚本・監督
(脚本は坂口理子さんも)

米林さんは「借り暮らしのアリエッティ」の監督といったほうが
とおりがよいだろう。

 スタジオジブリの製作部の解体により、
西村義明プロデューサーが、スタジオポノックを設立、
その長編第一作目という話題の映画であった。

 わたしたちは、どうしてもジブリを観てきているから、
それに照準を合わせて観てしまう。
つまり、二代目の宿命がここにもあった。


 あの、さつきの髪が風にふくらむ映像とか、
小川のなかにひかりのさしこむシーンとか、
やはり、いまのアニメーションは、
風とひかりと水をどう描くかが
ひとつのバロメータになっているのではないか。

そういう観点からすると、
この映画は、二番煎じにも達していない。

 たしかに、原作はイギリスの女性作家、
メアリー・スチュアートで、
すでに、『小さな魔法のほうき』として出版されているから、
ストーリーは、予定調和であったけれども、
ちゃんとしているとおもう。

 メアリ・スミスという11歳の少女が主人公で、
好奇心が旺盛、赤毛、青い目、そばかす、
といったちょっと日本人からは
距離があるが、どうみても日本の少女という感じ。

 だが、彼女の性格を目いっぱい映し出そうとしたせいか、
よけいに、薄さを感じざるを得ないことになったきらいがある。

 あまり、語り過ぎないほうがいいのだ。

トトロのさつきの頑張り屋さんは、
なんとなくしみじみと伝わってきたのだが、
こんどの、メアリは、こういう性格なんですっていうのが、
前面に出すぎたようにおもう。

 語りすぎるというのは、語らないのと
類比的になることなど、短歌でも
おんなじことが言える。

 やはり、観衆、読者の想像力に
訴えないとならないものというものが
あるということだ。

 ようするに、
スタジオジブリを越す「なにか」がないと、
われわれはすでに満足しなくなっているということである。


 「ああ、なるほど、そんな描き方があったんだ。
感心、感心」というものがないと。

 初代とおんなじだと、
(わたしは初代よりも落ちているとおもうが)
それは、塗り絵を見させられているような
おもいがどこかにひそんでいるわけだ。

 二代目の重荷はどの世界でもあるのだろう。

そういえば、安倍さんも総理二代目だった。