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源氏物語

 『源氏物語』の冷泉帝は、桐壺帝の第十皇子である。

母は、藤壺の女御。

だが、みなさんご承知のように、
ほんとうは、桐壺帝の子ではなく、
桐壺帝第二皇子、光源氏との子である。

つまり、義理の母親と息子のあいだに産まれたのが、

冷泉帝なのである。


藤壺の女御と光源氏は、二歳しか歳がはなれていないから、
カップルとしては、むしろこちらのほうが妥当だったかもれしない。


光源氏の青海波(せいがいは)の舞いをみて、
藤壺の女御は心ゆれる。


ふたりの仲が親密になり、懐妊する藤壺の女御に
はたして、桐壺帝は、その秘密をしっていたのか、
しらないのか、
その事情を『源氏物語』は書かないままであった。


『源氏物語』には大きく、三回の不倫劇がおさまっている。

さいしょの「ものがたり」が光源氏と藤壺。

つぎが、女三宮と柏木。

そして、宇治十条における、浮舟をめぐる、
薫大将と匂宮とのものがたり。


女三宮と柏木の子が、薫だから、
こういう負のスパイラルはエンエンつづくのだろうか。



冷泉帝も、出生の秘密をしらなければ、
平和だったろうに、横川の僧都がこっそり、
冷泉帝に、教えてしまうのである。

「あなたのお父さんは源氏さんですよ」と。


この横川の僧都はおしゃべりで、
宇治川に身投げした浮舟が、
尼寺で出家していることを薫に
伝えたりもしている。


ひとを呪わば穴二つ。


前川前事務次官は、
いま、羞恥刑を政府から受けている。

なにも、言われたくない個人の情報が
あからさまになっている。

政府のリークをしたなら、それなりの覚悟が
必要なのである。


やはり、穴はじぶんを落とし込めるひとつを
用意しなければ、ひとを呪えないわけだ。


しかし、横川の僧都は、
なぜゆえに、出生の秘密や浮舟のいまを
リークしたのだろう。


それは、じぶんには無縁の情報だったからである。

じぶんが、その事情にひとつでもかかわっていれば、
それを口外することはなかったはずだ。

ひとの秘密をにぎってしまったものは、
そのひととなんらかの関係性が
担保されなければ、その秘密は
あっというまに秘密ではなくなる、ということである。


おそらく、前川さんも、
正義感からなのか、政府からなんらかの
攻撃を受けたか、それははかりしれないけれど、
まったく関係性を失ったあとの
決心だったのではないかと推察するものである。


冷泉帝は、天皇の地位にありながら、
その補佐役としてそばにいる
光源氏を「お父さん」と呼べずに
懊悩する。


そして溢れる涙を父、源氏のまえにみせる。

ところが、源氏はそれを亡くなった
藤壺の女御への哀悼だと勘違いするの
が『源氏物語』のくだりである。


子は、出生の秘密や母親の密通をしりながら、
それを口にだすことはできずに
心をずたずたにしながらこらえているのだが、
それをまったく理解していない親というものが、
どこの世界にもあるものである。