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カレーうどん

 どうしてもカレーうどんが食いたくなった。
夜はひとりで家にいる。

 どうしてもカレーうどんが食べたいのだ。

なにしろ、昼は妻と千倉まで行き、
いやってほど刺身を食べてきて、
腹はまだ七分目。

千倉に行く道中、
このあいだのハワイ旅行の話を妻はずっとした。


こっちでね2000円で売っているルージュがね、
8ドルなの。あと、マニキュア、こっちじゃ、
1000円もするのが、5ドルしないのよ。
ね、もったいないでしょ。

妻はえんえん、こっちとあっちの値段の
格差を得意げにしゃべり続けた。


あああ、そうね、
やっぱり買い物はハワイだよね。


わたしは、はんぶんあきれた口調で
そう言ったら、さすがに鈍感な妻も、

は、は、は

と、軽く笑った。


潮風王国の特別な海鮮丼は、
悪意が入り混じっているくらい刺身が
乗っている。

それを食べたものだから、
まだ、空腹ではないが、
なんとなく、
梅酒(沖縄の「瑞泉」、これがうまいんだ)を飲みながら
映画を見ていたら、やはりカレーうどんだった。


冷凍庫に、うどんがあったから、
それを煮て、めんつゆを垂らし味を調える。

そこに、レトルトパックのカレーを流し込み、
それに「とろみちゃん」でとろみをつければ、
「完璧」なカレーうどんの完成だ。


わたしは、うどんを煮ながら、
レトルトのカレーを鍋に流し込んだ。

と、どうだ。

レトルトのカレーは、ふつうのカレーではなく、
ホウレン草カレーだったのだ。
専門的には「サグ」という。

あ。

カレーうどんはカレーの美しいカレー色ではなく、
みどりのどろどろしたやつに変貌した。

なんか「へどろ」みたい。

うわ。

ま、このまま捨てるのもなんだから、
とろみちゃんでとろみをつけ、
どんぶりに移す。

そして、ひとくち。

うわ。


なんだこれ。

野原を食べているような味だ。

まずっ。

わたしは、なんだか
とても悲しくなって、
この韃靼海峡の草原を流しに捨てたのだ。


流しは、どろどろの液体で栓がつまり、
しばらく流れないまま、へどろは、そこに淀んでいた。