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追従笑いの日本人

 ブッタフェイスという語がある。

あの日本人独特の含み笑いというやつだ。

アルカイックスマイルともいう。

 

あれが欧米人には受け付けないらしい。

笑うなら「パッ」と両手を広げ全身全霊で笑え、ということだ。

なにを考えているかわからないから、薄気味悪いらしい。

 

そんなんできないよな。ちょっと前かがみで後頭部を

なすりながらぺこぺこ「どうも、どうも」なんて薄ら笑いを浮かべる、

これが日本だ、わたしの国だ。

 

ただ、わたしが気に食わないのは、

アルカイックスマイルでも仏陀フェイスでもなく、

追従笑い、おべっか笑いである。

 

いや、お追従の笑いがいやなのではない。

「ああ、そうですね」なんて、

相手様にあわせて笑うのだけれど、

けしておもしろくもないわけだから、

その件がおわれば、はやくも真顔にもどりたいのだ。

 

その真顔にもどる、あの笑いからグラデーションの真顔にもどる

コマ送りのような表情を見ることがいやなのだ。

ましてや、わたし自身、きっと、いまゆっくり真顔にもどっているな、

という自覚もいやなのだ。

 

追従笑いをして、刹那、真顔にもどれればいいのだが、

マシーンでもないかぎり、そんなニンゲンはいない。

 

とにか、ゆっくり、酸が侵食するように

時間をかけてスローモーションで真顔にもどるのだ。

 

そこに、ニンゲンの「性」というものを

わたしは感じてしまう。

 

 近所の奥さん。なかなかのやり手で、

マンションを借りて「なんとか教室」を開き、

商店街にはお店も経営している。

 

 自宅も賃貸だから、どのくらいの家賃が

ひと月かかるのか、近所でも心配になるくらいである。

 

が、どうも家賃がうまくゆかないのか、

さいきん、不機嫌である。

もともと、のべつ不機嫌な挨拶をされる方ではあるが、

さいきんはとみにそうである。

 

 自転車でお会いすると、おはようなどとあいさつされたことはない。

ほんの数ミリあたまを動かすだけである。

それも、不機嫌そのもので。

 

 でも、わたしには、その挨拶でかまわない。

 

 追従笑いのグラデーションを見ずにすむからである。