世間では、「広辞苑」がもっとも大きな
国語辞書だとおもっているひとがなんにんもいるだろう。
「辞書は三省堂」というが、三省堂の辞書が
もっとも使いやすいとおもっているひとも
いるかもしれない。
「広辞苑」。あれなどは、専門家から言わせれば、
使えない辞書のひとつである。
語彙数もすくないし、漢語の造語成分も載らない。
広辞苑の項目数は、おおよそ25万項目である。
漢語の造語成分というのは、その字だけでは、
意味がなく、熟語にならないと成立しない文字である。
だから、広辞苑にない字は、
漢語の造語成分にはならない、と、
そう逆利用することも可能なのであるが。
専門家がもっとも利用する辞書は、
日本国語大辞典である。
小学館から出ている。
百科事典のような体裁で、20巻からなる。
一巻は「あ」から「いくん」までである。
二巻は「いけ」から「うのん」までである。
こんなふうに20巻がつづくので、
本棚はゆうに2段つかわざるをえない。
語彙数も50万語。だから、日本国語辞典に
載っていなければ、日本語として認定されていない、
そう言える唯一の辞書である。
「辞書は三省堂」
(語彙数は75000語)
これは、三省堂という書店のキャッチコピーであり、
とく三省堂の「新明解国語辞典」は、ひどく使いにくい
辞書の筆頭である。
「三時のおやつは文明堂」
だからって、おやつは文明堂の
ハニーカステラにはしないように、
辞書だって、新明解がすぐれているわけではない。
ものすごく偏った説明を、新明解はするのである。
主幹が山田忠雄。山田文法の提唱者で、
ひどく、主観的な見方をする学者である。
だから、語彙の説明も山田流なのかもしれない。
わたしも、若いころ、辞書の執筆をしたことがあって、
そのときは、卓上版の辞書を片っ端からあつめ、
そこにはないフレーズで、言葉の説明をしたおぼえがある。
おんなし説明だと盗作になってしまうからだ。
新銘菓国語辞典の初版がここにある。
さ、山田ワールドへようこそ。
二、三、例をあげてみる。
【みぎ】
大部分のひとがはしや金づちやペンなどを持つ方(の手)。
(からだの、心臓が有る方の反対側)
なら左はどうか。
【ひだり】
普通の人が茶わんを持ち、ぐぎ・のみを持つ方(の手)。
(からだの心臓が有るほうの側)
とすると、左利きは、普通の人ではなく、異常な人、
ということでいいのかな。
【ビキニ スタイル】
女性の着る海水着の一つ。乳の部分と
下腹部とをそれぞれ申しわけ程度におおっただけで、
大胆に裸体を露出したもの。
うん、この説明、ぐぐっとくるが、
辞書としてはどうなのか。
「申しわけ程度」という独断は、普遍性に欠ける気がするが。
いかがなものか。
【マンション】
スラムの感じ比較的少ないように作った高級アパート。
スラム街のひと、すみません。
しかし、まだ「マンション」はましである。
つぎのはいかが。
マンションではなく団地である。
若葉台団地とか、高級な団地はいくらでもあるが。
【団地】
住む家のない庶民のために、一地域に
集合的に建てられた・公営(民営)のアパート群など。
住む家のない庶民・・・