じぶんのしたくないことは、いっさいしない子でした。
夏休みは、自由研究はおもしろいので
かならず提出しましたが、
「夏休みのドリル」というのがあって、
毎日、天候をつけたり、
国語、さんすう、理科と学習のページもあり、
それがいやでいやで、けっきょくやらずじまい。
母から「あんた、宿題はいいの」って訊かれると、
「うん、なんにもないから」とうそをついていました。
と、8月の31日に母は、商店街で、宿題があることを
聞きつけてきたらしく「ちょっと、だいじょうぶなの」と、
わたしをせっつくのです。
「うん、もうおわっているから」とまたうそをつき、
はて、どうしたものか。明日には、このドリルを提出しなくては
ならない。
しかし、まったくの手付かず、白紙です。
おもいあまって、まだ小学校6年の浅知恵なのか、
わたしは、だいたんにも、このドリルを
糊で貼り付けて、簡単そうなところ、3ページくらいを
書き込んで、提出したのです。
あとから、カンカンに先生に怒られても、
もう剥がれませんから、いいやっておもったかも
しれません。
新学期になって、わたしは毎朝がひやひやものでした。
いつ、烈火のごとく叱られるのか。
ところが、先生はけっきょくおこりもせず、
わたしは無罪となりました。
あのとき、先生というものは、夏休みの宿題など、
見ないものなんだなってうすうす気づいたものです。
そんなわたしも、ずっと教師をしております。
しかし、いまでも、嫌いな跳び箱や逆上がりは
人生、いちどもしていません。