土曜日に歌会があった。短歌のあつまりである。
大岡山の北自治会館の二階。
年に4回、開かれる定例会である。
歌会というのは、各自、自作の短歌一首ずつを持ち寄り、
みなで互選し、その優劣、あるいは美点・欠点を
指摘しあう、知的(なつもりの)遊戯である。
今回、もっとも難解であったのは、
・火影がただの影になるまで声をあげわかるよきみたちの来世は鳥
新進気鋭の、大学院生の歌。
歌集を出されたばかり、またその歌集が、
アマゾンで2位になっているという、
注目の歌人の歌である。
しかし、彼女の歌をわたしはよくわからない。
これが正直なところである。アマゾンで2位になっている
ということは、その歌集を読む読者がうんといる、
ということだろうが、短歌歴30年のわたしにわからないものが、
短歌をしらないひとに通じるのか、どうか。
あるいは、すでにわたしが劣化して、
もう「お呼びでない、こらまた失礼しました」って、
植木等のようになっているのか。
・火影がただの影になるまで声をあげわからないきみたちの来世なんかは
ま、こんな歌なら、うーん、すこしはわかるような気がするが。
しかし、歌会のメンバーは、これに、ああでもない、
こうでもないと、コメントをしていた。
偉いねぇ。
さ、休憩。
宮○さんがトイレにいく。
かれは、だれがみても巨漢である。
わたしもかなり太いが、その倍くらいある体格。
性格は温厚で、肉食というより草食系。
恐竜でも草しかたべないやつがいるが、
ま、そんなところだろう。
が、かれは温厚なのだが、あまり他を気にしない性格なのか、
じっさい、他人を気にすれば、もうすこし痩せるのだろうが、
トイレのドアも開けっ放しなのだ。
ジョボジョボ
ものすごい音が会場にひびく。
みな顔を見合わせ、この音を聞く。
そこには、新進気鋭のうら若き乙女も、
上品な女性もあまた出席しているというのに。
ジョボジョボ
「聞こえてきますよ、宮○さん。ドア開けっ放しでやるんだから」
「おい、閉めろよ、しかたねぇなぁ」
と、口々に厠にむかって、
いままさに、巨体がどういう格好かを想像しながら、
大きな声をかける。
と、宮○さんは、言下にこう言った。
「全部、聞こえてますよ、ドア開いているから」