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恥ずかしい

 学生さんで、
それはそれは、大柄な方がみえた。
4人のグループだ。

 おまけに、坊主頭。
三分刈りというのだろうか、
スキンヘッドにちかい。


 大盛ラーメンにぞうすい、と
うちではわりに大食の方のコースである。


 そして、わたしはその学生さんを
よく知っているつもりだったので、
声をかけた。

 と、かれは、

 「ともだちに言われて、はじめて来たんです」
と、答えた。


 いや、そんなはずはない。
ちょくちょくご来店しているはずだ。

 なぜなら、わたしがよく知っているからだ。

 「あれ、はじめてですか。
わたしお客様を知っているんですけれど」

「あ、おれ、いちど見たら忘れないとおもいますよ」
と、笑っている。


 と、すこし考えて、おもいだしたのだ。

駅前の四川屋台である。


 四川屋台は、
大量の、鶏を揚げた油淋鶏を
630円で大放出する店である。


 そこで、かれは、洗面器くらいのどんぶりに
ご飯をいれて、もぐもぐ食べていたのだ。

わたしは、その対面で、担担麺を頼んでいた。


 ちょうどおんなじ時間に、かれと対面で、
同席していたのだ。

 その一回の印象が、脳裏に焼き付いていたわけだ。


 「あ。わかりました。お客さん、月曜日、
四川屋台で、ものすごいどんぶりで、
定食食べていたでしょ」

「あ、そーかもしれません。おれ、あそこじゃ、
いつも大盛のご飯だから」


「あ、そーでした、そーでした」

「あ、あのぉ」

「はい」

「担担麺食べてませんでした」

「あ、そーです」

「わかりました」

「わたしですか」

「はい、担担麺にものすごく野菜いれてませんでした?」

「あ、そーです」

「わかりました。わかりました。
その野菜、コップのなかに落としてましたよね」

「あ、あ、そうです」

だれにも気づかれていないとおもっていたのだが、
わたしは、四川屋台に行くと、いつも、担担麺のなかに、
大量の机の上に置いてある野菜を入れて、
それにかぶりつくという、とてもみっともないことを
していたのであるが、まさか、
それを指摘されるとはおもいもよらなかった。

そして、その野菜をコップのなかに落としてしまったのだ。


ほんの十数分の時間なのだが、
かれは、いちど見たら忘れないという人物らしいが、
わたしなど、まさか、そんなふうに
ひとの脳裏に焼き付くとは。


やはり、ラーメンの中に野菜をどっさりいれるのは、
相当、かわっているのだろうか。

あるいはコップに野菜を落とすやつは
めったにいないのか。


恥ずかしいじゃないか。