目が見えない動物はいるのだが、
耳の聞こえない動物はいないらしい。
これはセス・S. ホロウィッツというひとが
『「音」と身体のふしぎな関係』という本で
書いているが、身体と音というのは、
じつに関連しあって存在しているそうなのだ。
赤ん坊の産声、さいしょに泣く音は、A(アー)の音らしい。
ちなみに、時報もAの音だ。
いわゆる「ラーはラッパのラー」である。
これこそ、もっともにんげんになじみ深い、基本的な音階だという。
そのことは、きょう、婆娑羅の店主といっしょに
スーパーに買い物にいくときに、かれからおそわったことだ。
この店主の歌声はプロ顔負け、猪俣公章のところで、
以前、ボイストレーニングを受けてたというのだから、
並ではない。
歌合戦でトロフィーを抱いている写真があったから、
素人、日本一なのかもしれない。
で、かれいわく。
ソの音は、中心だから、心臓にあたるらしい。
ドは下腹部よりも下の大事な部分と共通する。
身体と音とは、びみょうに絡み合い、補完的関係でもって、
存在するいじょう、音楽が、この世からすたれることはないだろう、と。
「女性の喘ぐ声も、ひょっとするとAの音じゃないか」
と、かれは笑いながら、そう言った。
なるほど、もっとも基幹的な音なんだから、
そうかもしれない、とわたしはすっかり感心した。
しかし、それを知るためには協力者が必要だ。
そして、音叉かなにか、音程を測る装置も必要だ。
そして、また、それを知ったところで、なにになるのだろう。