知人に「コマツ」さんがいる。コマツさんは、
ちょっとビンラディンに似てるんで、
コマツビンラディンと呼ばれる。
あるいは、
あんまりにも吝嗇(リンショクと読む、つまりケチ)なんで、
まるでプー太郎とおんなじじゃん、ということで、
「コマのプー」とも呼ばれている。
で、コマのプーさん、釣りに行き、「ごんずい」を釣ったそうだ。
まだ、コマのプーさんが初心者のころ。
風が強いとじぶんの仕掛けがじぶんに戻らないで、
鯉のぼりみたいにヒラヒラするのね。
で、それを取ろうするんだけど、なかなか取れない、
それも夜中。
彼は、右手に竿をもち、ひだり手を高く空にむけ、
じぶんのエサが手許にくるのを、じっと待っている。
だが、なかなか、手許に来ない。不動の姿勢。
それ、はたで見ていると、なんかローマの彫刻みたいで
おかしかった。
「ごんずい」って毒があって、やたらには触れないんで、
プーさん、もたもたしていたら、
なんと、すきをついて子猫が「ごんずい」くわえて逃げていった。
こりゃたいへん、コマのプーはあわてて竿をふりあげた。
なにしろ、じぶんのものに固執するのは、天下一品。
フランス旅行で、バイクの二人づれの盗賊に
リュックをひったくられたとき、
石畳のうえをずるずる引きずられても、
けしてリュックから手を放さなかったという、
豪傑というより、やはり吝嗇の権化みたいなひと。
だから、猫に「ごんずい」取られたとあったら、たいへん。
執着心すこぶる強し、身体が勝手に反応すんだね。
「ごんずい」はまだ、針にかかったままだから、
ふりあげた竿には、「ごんずい」をくわえた猫が、
ぶーんと大の字になって空に舞いあがったそうだ。
コマのプー、猫を釣る。