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麻婆豆腐だぜ

ヨシムラ君が来るというので、
なんか作っておこうとおもい、麻婆豆腐をつくる。

 といっても、東急ストアにたどり着いたのが、午前11時40分。

 千葉県での仕事の帰りだと、この時間になってしまうのだ。

 彼からはメールが届いており、
彼も多忙な人生で、そちらにうかがのは12時すぎくらいで
よろしいでしょうか、という内容だった。

 ちょうどいい時間だが、
一般的な感覚だと、12時から拙宅に来て、酒をのみはじめるのは、
どうかんがえても異常だろう。

 きっと、わたしどもは、その異常の中で
暮らしているのだとおもう。

 いや、みな異常を異常ともおもわずに、
民族誌的奇習の中に生きているのかもしれない。

 と、むつかしい話はどうでもいい。

夜中のスーパーなので、にんにくの芽はなく、
しかたなく、ニラを買い、豆腐と合いびきも買い、帰宅。

 すべての材料は、冷蔵庫にある。

 豆板醤・豆鼓醤・オイスターソース・豆鼓・甜麺醤・コチジャン。

これに、わたし特製のラー油がはいる。

 漢字が読めないといけないので、すべてカタカナで表記すれば、

「トーバンジャン・トーチージャン・オイスターソース・トーチー・
テンメンジャン・コチジャン」

 すべて、肉まんに平気でダンボールを刻んでいるおとなり中国の品だ。
タクマラカン砂漠で平気で核実験をし、死の灰を日本に振りまいて、
なおかつ、おとなり北朝鮮の核実験を反対している国の品、
と、いっても同じである。

「豆板醤」も、二種類あるが、麻婆豆腐には、そら豆のものがよい。
「豆鼓」は、豆を発酵させたもので、
袋にはわけのわからぬ言語が印刷されている。
つまり、 大丈夫ですか、と言われるほど、
中国の調味料だけで作られるものなのだ。

「他国が気になってきょろきょろしている日本」のものは
なにひとつないのだ。



 麻婆豆腐は、だいたい15分あれば完成である。
帰宅して、さっさと作って、と、ちょうどヨシムラ君が来たものだから、
部屋で待っていてもらい、アツアツのを出した。


ビールを飲みながら、待っていたかれは、ひとこと。


「豆腐スープですか?」

(違ぇよ)
わたしは、心のなかでそう言った。

「辛いですよ」
肉体から発せられたのはこの一言だった。


一口、かれが口にして言ったのは、


「和風ですね」


 かれは、いまもとなりの部屋で眠っている。