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店舗案内

お茶をする

港区白金台。
白金台の駅から2分ほどの並木道の中ほどに
「レトルダムール グランメゾン白金」はある。
 
 その界隈では、有名なケーキ屋だ。
「LETTRE D’ AMOUR(レトルダムール)」とは
フランス語で「ラブレター」の意味で、
パティシエの心意気が込められているという。

 インチキフランス語しか知らないわたしには、
「レトルダムール」が「ボン・ジュール」の次に覚えたホンモノのフランス語かもしれない。


「モンペ ト クワ」(農業)
「シッポマデ ア〜ン」(たい焼き)
「ジュッテ・モッタ?」(捕物)
「マダ・モタ〜ン」(捕物その2)
「シャセイ・ジュセイ」(妊娠)


と、こんなものがいままでのわたしの知識である。


文月さんとも真紀さんとも、あやかとも、
この店でお茶をして、上質な時を過ごしたこともあったが、
きょうは、ナナコとナナコの母をつれてきた。

ナナコが大井町というちょっと薄汚れた街のデパートで
チョコレートを買い占めていたのを拾って、
ここまで来たのだ。

われわれは目黒で金垣さんの見舞いの帰りだった。

ナナコもナナコの母も二階にあがるのは
はじめてらしく、きょろきょろしている。

店内は、シロガネーゼの主婦たちでいっぱいだ。

そう広くはない店だが、
外苑西通りの、風で揺れる木々が窓越しにみえて明るい。

わたしは「カネガネーゼ」なのだが、
奮発して、全員にケーキセットを注文した。

ほどなくケーキ登場。

白い皿のちょうど真ん中にちょこんと行儀よく
しかし、あくまで誇らしげに、
そのまわりを、さらさらの砂糖が飾り、
まるで王妃の初夜のようなおもむきでケーキは置かれていた。


ここで、真紀さんなら写メを撮って、
これよって見せるのだが、わたしにそんな技術はない。

想像してもらうしかないのだ。


ナナコの母は、数秒でアイスティーを飲み干し、
王妃を数分でたいらげ、ナナコは、それを横目で見ながら、
時間を楽しむようにケーキにフォークを入れている。


40分間のティータイムを終え、われわれは階下に降りると、
すでに、母はバケットにいくつかの菓子を入れている。

フォンダンショコラも4個入りを買っている。

だが、ナナコの母は一銭も金を持ってきていない。
すべて、わたしの財布から「お足」は出て行くのだ。

すぐに出ていくものだから「お足」と言った、
むかしのひとの語彙感覚に敬意は評したいのだが、
なにしろ「カネノネーゼ」にはつらい。

けっきょく6000円くらい払わされ、
われわれは車にもどった。


「日常品じゃない、こういうのがいちばんうれしいね」
と、母が言った。

「ま、ぜいたくだよね」
と、娘はぼそりと。

「フォンダンショコラは4つ買ったんだろ」
と、わたしが訊くと妻は
「そーだよ」と答えた。


おれの分がまた入っていない・・・


外苑西通りの坂を少し下ったとろこに
車を停めていたので
われわれはしばらく歩かなければならない。
日差しはあっても冬の風は冷たかった。


この坂を降りて右にまがると、「アザブジューバン」である。