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よい参考書

「小論文の書き方」


 
そんな参考書が山ほど出ている。

「小論文」とは謎である。

「小論文」とは、大学や企業が課するひとつの考査手段なのだろうが、
はたして、査定する側はそれを査定するだけの能力があるのかどうか、それすら、わからない。

そもそも、なにを基準にしているのかも、きっと、千差万別の気がする。


「小論文」という領域が誕生したことにより、それに乗っかって、後続したところもあろう。

そんなところに、歴然とした基準などないはずだ。



ほんとに謎だらけなのだ。




 で、首をかしげながら参考書を見る。

と言ってもわたしは、ひとの本を読むのが苦手なんで、斜め読みなのだが、


おおよそ、どの本も、まずは、結論。

そしてその結論に寄り添って、
「その理由は」とくる。


「理由、その一」「理由その二」、
そこに、卑近な具体例でもあればなおのことよし、
それが、滞りなく説明し終えると、「だから」と、冒頭にあった結論をもういちど、
最終章に配置して、「はい、出来上がり」と、ま、こうなっているようだ。


つまり、結論を冒頭と末尾に据える、
いわゆる「双括式」の文体を推奨している。


起承転結で言えば、
「起」と「結」が同文になるという構図である。



な、はずないじゃん。


わたしは、ここ25年大学入試の評論を見てきたが、双括式の文体なんか
いちども見ていない。


双括式の文章をよくやるのは、本居宣長くらいなもんだ。
あの人は江戸のひとだからね。


やはり、専門家は尾括式の文体を採用するものである。
結論は末尾箇所。


だから、書くときはまず結論を頭におもいうかべ、
そして本論を頭にうかべ
(頭の中でチャート図ができていなくてはならないが)
そして冒頭は、すこしゆるい話からはじめるものなのだ。

それを「まくら」と呼んでいる。
落語でも、評論でも、小論文でも、この「まくら」がだいじである。

「さいきん、景気がよくありませんわね。
だから、ケチなひとも多くなりましてな」
なんて、話からはじめ、
「与太、となりの旦那から金槌借りてこい」
「へぇ〜い」「ごめんくだいな」
「なんだい、与太か。どうした」
「へぇ、なんでもうちの旦那さまがお宅から金槌を借りてこいって
そう言うもんですから」
「ほぅ、金槌。なにに使うんだ」
「金槌っすから、たぶん釘の頭でも打つんじゃないでしょうか」
「ああ、そうすると金槌が減りますな、
それはお貸しできませんわな」
「さよですか、ほな、さいなら」
「おぉ、与太どうだった」
「はい、なんでも金槌の頭が減るって貸してくださいませんでした」
「なんていうケチなお方だろうね。しかたない、うちのを使おう」

なんて、ま、長い「まくら」があって、それから、
本論につなぐ、フレーズを考えるのだ。

つまり、「まくら」「本論につながるフレーズ」「本論」「結論」と
こういう構成になる。で、
これが、結果的に起承転結のすっきりした文章になっている、
というものなのである。


だが、そんなことを書いてある参考書はたぶん皆無だろう。


みんな双括式の、ステレオタイプの「だれでもいっしょ」の間違いで、
教わっているのだ。


そもそも、参考書に「よいもの」があるはずがない。

それに、ほとんどのひとが気づいていない。


高校野球といえば、横浜高校。

あそこのピッチングコーチはプロからこっそり伝授されたものを
高校生に教え込んでいる。だから、牽制なんかプロ並みなのだ。
松坂が西武に入団したとき、
「すでに、お前には教えることはなにもない」と、
プロのスタッフに言わしめたほど、横浜高校は
間然するところがないのだ。

で、その教授法を野球の教本として売り出したとする。
「わたしは、こうして松坂を育てた」なんて
タイトルで。

まず、ほとんどの野球関係者は買うだろう。
へたすれば、ミリオンセラーになるかもしれない。

が、その内容が人口にカイシャしたとき、
すべての高校野球が、横浜高校野球になっているのである。


ね。だから、そんな参考書書くはずないでしょ。

それとおんなじように、予備校の先生が、
じぶんの根幹となる教授法を、参考書に書くはずはないのだ。

つまり、参考書とは、もっとも急所のところが脱落している指導書ということになるのである。


それを盲信して買い込んで、せっせと勉学にいそしんでいる生徒をみると、
なんだかせつなくもなるものだ。


参考書の使い方のもっとも正しい方法論は、
「なにが書いてあるかではなく、なにが書いていないのか」を探ることなのだ。


きっと、小論文の書き方を書いている先生は、教壇では、
ちがう教え方をしているのに違いない。

そしてこんなことを言っているかもしれない。


「小論文は謎です」