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エアコンバトル

 熱帯夜がつづく。

むかしは窓さえあけておけば夏でも快適にすごせたのに。

窓をあけて寝るのかそうでないのか、

そんなことで二派に分かれていたくらいだった。

窓をあけておくと、夜中に凍えてしまうから、

わたしは窓をあけて寝ることはいっさいしなかった。

高校時代ウィンドファンというしろものがあった。

窓にとりつけて夜の外気をとりいれる高級電化製品、

あこがれたな、タイマーがついているから好きな時間に止めればいい。

 

いまじゃ、エアコンをつけて寝るのかそうでないのか、

むしろエアコン派が多いのじゃないか。

エアコンをつければおのず熱い風を町に吹きだすので、

町はより暑くなる。じぶんの部屋さえ涼しければ、

町はどんなに熱せられてもかまわないという

自己本位主義の典型だ。三日間くらい、

夜の町のエアコンと車の通行をいっせいに止めたら

どのくらい涼しくなるのだろうか。

 

 わたしは、窓をあけるのも好きではないのだから、

ましてエアコンのなかでは寝られない。

いつもエアコンは消す。エアコンをつけて寝ると

水分がからだにたまって水ぶくれの氷枕のようになってしまうのである。

 

ついこのあいだまで、わが家では五人がいっしょの

部屋で寝ていた、現代版竪穴式住居である。

この竪穴式住居からさいしょに脱出したのは息子、

それからは四人、妻と娘二人とわたしで寝ていた。

ダブルベッドには妻と次女。そのとなりに三段ベッド、

下段にわたし、最上段に長女、まんなかは息子のぬけた、

ぬけがらとなっている。三段ベッドは、

文字どおり一段ずつが狭く、ベッドにはいるのも一苦労だ。

わたしなんか、妻の足の裏をみながらその下段に

もぐりこんで寝るのだ。いつもベリーロールのような格好でもぐっている。

たいがい、わたしが最後に寝るのでエアコンを消して寝る。

と、どのくらいの時間が経ったのだろう、

なんかうなり声のような悲鳴のような声とともにエアコンが

威勢よく吹きだすのだ。エアコンがつきだすとわたしは寝られない、

だからベリーロールでのそのそ起きだし、

スイッチを切る、と、どのくらいの時間が経ったのだろう、

なんかうなり声のような悲鳴のような声とともにエアコンが

威勢よく吹きだすのだ、すると、わたしは寝られない、

だから、またのっそりと起きて切る、

と、うなり声のような悲鳴のような声とともにエアコンが

威勢よく吹きだす。毎夜毎夜このようなエアコンバトルがつづき、

あげく、とうとうわたしはその部屋から追放を命ぜられた。

 

 いま、わたしは畳の部屋でひとり寝ている。

エアコンもない部屋だ。朝起きるとパジャマが汗で

ボチャくらいの重さになっている。

さすがにがまんができないのでついに東の窓をあけて

寝ることにした。が、これがすこぶる快適、

快眠である。けれども、その窓から、

毎朝五時頃、朝の太陽がわたしの全身に

容赦なく照りつけてくるのである。