きのうはつきあいもあって、
夜中まで酒を飲んでいた。
飲んでいたといってもわたしは車だったので、
ウーロン茶一杯。わりあわないね。
甲論オツバク、そのあとは日本酒の話題になって、
そうすると、みなさんお気に入りがかならずあり、
「○○知ってます?」ってことになる。
その酒の名は、月桂冠でも黄桜でも大関でもない、
地方の知られていない酒の銘柄である。
で、いや知りませんな、という答え、
すると、いや、あれうまいですよ、と。
抽象的なはなしをされてもしかたないんで、
へー、で、どこの酒ですか? と訊く、
富山ですよ。なんて問答があって、
日本酒のばあいここではなしはおしまいになる。
つまんないね。けっきょく自分の知識のひけらかしだろ。
ただの自己満足だ。
留美って知ってます?
いや、知りませんな、かわいい子なんですよ。
へぇー、どこの子ですか、渋谷に住んでるんですよ。そんな感じだ。
だいたい、味の説明なんてそう簡単にはひとに伝えられないし、
場所を教わってもどうなるのか、
また、好みっていうのもある、
だいいちその名前を聞いたってずっと覚えているはずないじゃないか。
これが、日本酒でそうなんだから、ワインとなると最悪だ。
六三年と六五年は不作でね、ありましたよ、
これ、若いけれど飲み頃でいいですよ。
きのうはひとりが飲み屋のテーブルにコンピュータを取り出して、
インターネットでワイン屋のホームページを開きはじめちゃって、
つまりは彼の独壇場、パネラーとして大活躍したんだけれど、
聞いている方はなんだかわかんないよ。
ディケム、ラフィット、ロマネって言われてもね。
これいまお買い得なんですがね、
でも、すぐには飲めないんですよ、
すぐには、そうですね、飲み頃は二〇年後かな。
ふーん、ふーん、わたしはただうなずくばかり。
酒はしずかに飲むべかりけり、である。