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答えのかず

 閑かさや岩にしみいる蝉のこゑ

 

 人口にカイシャした松尾芭蕉の名句だが、

この句の完成までには幾度かの推敲があって、

たしかさいしょは「山寺や岩にしみつく蝉のこゑ」

だったとおもう。そのつぎの改作が

「山寺や岩にしみこむ蝉のこゑ」。

が、やはり「閑かさや」の句は

「閑かさや岩にしみいる蝉のこゑ」以外は考えられないわけで、

その一語なりとも文字の入れ替えをしてしまったら、

句はいっきに価値をうしなって、

ごみのようになってしまうというおそろしさをもっている。

つまり、答えはひとつ、一通りしかないのだ。

 

 ところが、これが芸術でなく、

学問となると答えは無限にある。たとえば、和訳

。なんとおりも考えられるわけだ。

タイタニックという映画でデカプリオが

女の子を船底から助けて逃げるシーンに、

しょっちゅう、Go  on.  Go  on. って言ってた。

がんばって、でも、早く、早く、

でも、急いで、でもかまわない。

 

辞書で調べれば、何々し続ける、とあるから、

何々し続けろ、何々し続けろ、じゃ、意味が通らない。

生きた英語に死にかけた辞書は役をなさない。

畑正憲さん、ムツゴロウ先生は学生時代、

東大ですよ、英語の時間に和訳があたって、

He kissed  her.  という箇所に1時間かけたそうだ。

 

 彼は彼女のうなじにそっと手をやり、

彼女の瞳の奥には彼の彼女をやさしく

求めるブロンズの瞳が映り、

なんてエンエンやったそうです。

教授もあきれていたそうだが。訳はひととおりでないという