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差別用語

ママさんバレー、いまは家庭婦人のバレーと呼ぶが、その練習に出た。

ポリティカル・コレクトネス、

ママさんは使ってはいけないらしい。

家庭婦人とママさんとどうちがうのか、

とても理解に苦しむが、言い方ひとつで内実が変わるわけないのに、

世の中おかしなところに力をそそぐものである。

 

しかし、差別用語なら使用禁止もしかたないところで、

わたしがびっくりしたのは、

さいきん「ちびくろサンボ」という話じたい消滅したらしい。

大木の周りをぐるぐる回っているうちトラか

ライオンがバターになるという食糧事情になやむ国に

このバターを送ってはいかがというような筋であったことを

記憶しているが、いま、演劇会でも紙芝居でももちろん映画でも、

あのバターの話はやらないのである。

仄聞するところ、どうも、タイトルに問題があったらしい。

つまり、「ちび」が差別用語なのだ。

それから、「くろ」もいけないらしい。

そして、わたしにはよくわかんないが、

「サンボ」も土人とかそんな意味でこれも

差別用語なのだそうだ。

なんだ、「ちびくろサンボ」って差別用語だけで出来ていたんじゃないか。

 

 で、話がもとに戻りにくくなっているが、

わたしは家庭婦人のバレーに出たのだ。

前衛を守っていたから敵をブロックしようとネ

ットにはりついていたら、

会長、会長、さがって、さがって。

と甲高い声。

 

わたしはなにを勘違いしたのか、

サーブレシーブするところなのに、

ネットに張り付いていたものだから、

みんなびっくりしたのである。

「あっ」と、おもってうしろにずりずり下がったら、

奇しくも、そこへサーブしたボールが飛んできやがった。

 

ボスっ、にぶい音とともにボールはわたしの

よこ腹にあたり外野へ飛んでいってしまった。

わたしはちょっと呆然とした。

と、ネットの向こうから副部長が言った。

すみません、まじめにお願いします。

なんだと、べつにふざけてるわけじゃないやい、

とおもっているところ、

今度は、低い声で同じコートからぼそりといったやつがいる。

わたしは、そのひとことにひどくショックをうけた。

あれは差別用語以外のなにものでもないぞ。

その声はこんな風にわたしに伝わった。

 

呆け老人。