これも今は昔。
鳴かぬなら殺してしまえほととぎす
経営危機におちいっている
企業を助けるために公的資金の導入をする、
いわゆる産業再生機構が竹中大臣のもと作動した。
その対象が、ダイヤ建設、九州産交、
それから東北のスーパーマーケット、
あともうひとつが住友なんとか、という会社である。
ともかく一級の企業はこの機構のリストから漏れたのである。
ということは、もともとこの機構には無理があって、
自由経済社会における自然淘汰されるべき企業を国が税金を使って
援助するというシステムこそ、社会主義国家のたどる道筋だからである。
さいしょから、羊頭狗肉、中身のない政策であることは
周知していたので、このシステムがたとえ失敗しても、
「傾国の政策」とならないように、
ダメージの少ない会社ばかりが選ばれた、という事情である。
ま、選ばれた会社は、棚からぼた餅、
おこぼれちょうだいのようなもので、
ほくほく顔であろうが、この反動として、
すでに株式市場で奇妙な動きが起こっているのである。
ダイヤ建設のライバル会社、ネオパレスの株が下がりはじめたのだ。
ネオパレスは、経常利益もそこそこで、
つまり、産業再生機構のお世話になる必要のない会社、
もっといえば、資本主義社会の真ん中を正しく歩み、
正しく経営していた。ネオパレスは言ってみれば、
はなさか爺さんみたいな平和主義者だったのに、
お上が隣のなまけものの意地悪爺さんに加担するばかりに、
はなさか爺さん、ポチとともにどんどん
貧乏になってしまった、という、
とても哀れな挿話ができてしまったのである。
ネオパレスの社員はおもわないんだろうか。
「ちゃんと努力してきたおれたちが、なぜ」
と。
今回の、産業再生機構の生んだ大きな歪みは、
健全な企業努力をした会社が損をするという、
高度資本主義国家ではあり得ない不条理が
まかりとおったという事実である。
こういう現象を、モラルハザードという。あるいはアノミー。
このような政府レベルのモラルハザードを
とりあげれば枚挙にいとまがない。
前々から述べていることだが、
発泡酒という税率の低いところに着目した企業が、
企業努力をしてすこぶるビールに近い製品を世に提供し、
安くてうまい、という一般消費者にもっとも
純粋な喜びを与えた(はずだった)のに、
そうかい、そんなに売れているなら、
この商品にもっと税金をかけましょう、と、
いとも簡単に税率をあげてしまった。
直情径行な短絡的な政策ではないか。
ガソリンなんかは、その六割が税金なのに、
その税金とガソリンの値段とを加算して
消費税を徴収している。つまり税金の二重取りなのだ。
校門前の島田商店が、店売りしている
百二十円の缶コーヒー、
これはもちろん消費税込みの値段だが、
それにまた五パーセントの税金をとって売っていたが、
いまでは10%だが、
まったくこれとおんなじである。
島田商店のおぞましい強欲婆さんの顔をみると
すこぶる胸糞わるいが、
これを国が行っているんだから、なにをかいわんや、である。
年商一千万円以上の商店も、
ことしから消費税を支払う義務が生じたが、
一千万円の売り上げがあっても、
一千百万の支払いがあれば、その商店はおのず、
赤字である。だが、消費税はこの一千万円にかけられるから、
消費税五パーセントを国に納税しなくてはならない。
つまり五十万円だ。ということは、
この商店は年度末に百五十万円の赤字を
計上することとなる。もともと、消費税は、
その商品にかけられるから、つまり、
その商品は五パーセントの値上げをしなくてはならないのだ。
が、ちいさな商店で五パーセント、
八百円がいっきに八百四十円に値上がったとなれば
客足は遠のくに決まっている。
まさか、値上がりの理由が消費税分だとは
だれしも理解しないだろう。
また、値上げをして客数が減っても、
国は責任をとるはずはない。ということは、
中小の商店はいままでどおり値上げをせずに自腹を切って、
消費税を支払うこととなるだろう。
これじゃ、舌も出ない農民から年貢の増量を
強いる悪代官みたいじゃないか。
だから、おのずどこの商店も年間五十万から百万くらいの
税金を払うために、その商品の質を落とすのである。
食品関係なら、まずくなるわけだ。
こんど中小企業のために、貸し渋りのない
銀行をつくると鼻息荒く竹中大臣は言っていたが、
あれは、消費税の払えない企業のための
政府機関なのではないか、と疑ってしまうのだ。
国は、目先の利益のために、
ほそぼそ、それでも質の高い商品を
提供しようとしている商店に、
商品の質を落とさせ、
ひいては、日本文化の質まで落とさせようとしているのである。
消費税払えないの、じゃ、わたしが貸してあげましょう。
国家的モラルハザードはこれから
坂をくだるような勢いで日本を覆いつくすだろう。
ちょうど、首相の再選を予想する
新聞の見出しが出ている今日この頃である。
やはり、ほととぎすはあっさり殺されてゆくものなのである。