レオナルド・ダ・ビンチの
「モナリザのほほえみ」という
絵画をしらないひとはまずいないでしょう。
どこからともなくにじみでるほほえみです。
「モナ」は婦人、「リザ」はエリザベッタの
愛称であるなどということはどうでもいいことですが、
しかし、あの絵画のうしろの風景を
よく見たひとはいるでしょうか。
ものすごく暗い、どんよりとした森のようなのです。
ダ・ビンチの活躍した時代はルネサンス時代です。
では、あの絵画の象徴するものはなんだったのでしょう、
管見でもうしわけありませんが、まずは、欧州の歴史からもうしあげてゆきます。
ヨーロッパの歴史をおおきく、
三分すると「古代」「中世」「近代」と分類されます。
まず、古代ですが、あのギリシア神話のうまれた時代、
人びとにも自由や生きることへの思考が
さかんな時代でした。そもそも、その時代はなんなのか、
ということはいまの時代、令和の時代でも
じつはわからないものです。
いま、わたしたちがどんな時代を生きているのか、
その時代のレールに乗っているひとは、
偏見やバイアスによってゆがんでみえてしまいがちです。
そこで、どの時代もそうなんですけれども、
劇画や物語や神話に、その時代を投影させて、
すこし離れたところから「いま」を見つめようとしてきました。
ギリシア神話もそのような事情で語られたのではないでしょうか。
じぶんを含む風景を他所からながめること
をヘーゲルというひとは「自己意識」と呼びましたが、
ギリシア神話もけっきょく自己意識の発露だったのかもしれません。